あほニュース.zip

脳の力が抜けるような記事を取り上げています(仮)                               近況:転居とか完了しました。通常業務再開。

最近の記事

--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2006-05-12

『村上春樹風』 今日の愚痴  下

【生活全般】『村上春樹風』 今日の愚痴
510 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/02(日) 23:44:44 ID:wPal4AeA
僕は熱いシャワーを浴び、丁寧に髭をそった。
部屋中に散らかっているゴミを拾い、掃除機をかけた。
洗濯をし、シャツにアイロンをかけ、布団を干し、滞納している電気ガス料金を支払いに行った。
今日は現実的になる日なのだ。
簡単に買い物を済ませ、簡単なおかずを作った。
しかしなにかかが僕の頭の中で警笛を鳴らしている。
なにかが決定的に欠けているのだ。

僕は大きく深呼吸をした。
いったいなにが欠けているのだろう?

テレビではアンジェリーナ・ジョリーが2丁拳銃で正確に無駄なく敵をしとめていた。
僕は彼女の華麗な動きを眺めながら、ゆっくりとテーブルの前に座った。
そこで僕は決定的な欠陥に気づいた。


ご飯を炊いていない。

僕は酷く混乱した。
ご飯を炊いていない。

「なれない事をしたからきっと疲れてるのよ」と脳内で彼女が言った。
僕は曖昧にうなずきご飯が炊き上がるまでおとなしくトゥームレイダースを観る事にした。

541 :村上世彰 :2005/10/15(土) 12:35:28 ID:npBUyeHW
どうして私の気持ちを分かってくれないのか?
金稼ぎの何処が悪いのだろうか?
誰も「阪神タイガース」を「村上タイガース」に変えるなんて言っていないではないか。ただ、私は私の資産を肥やしたいだけなのである。ただ、それだけなのである。
しかし、彼等(阪神電鉄)はいささか不服があるようだ。
そんなもの、私の知ったことか。So what?
どうやらこの話はかなり長引きそうだ。
「やれやれ」と私は言った。

542 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/15(土) 12:41:23 ID:rI3JLQTz
「そっちの村上かよ!」
ぼくはディスプレイを前にして思わず声を大にしてつっこんだ。

551 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/15(土) 22:47:11 ID:9i+ck8Ib
押尾学はひどく損なわれてしまった。
「誰かが救うべきだったんだ。」
しかしそれは飲みかけのギネスビールのボトルに捨てられた煙草の吸殻と同じくらいに
意味のないアイディアにも思えた。
「研音は押尾を救うべきだったんだ。」
僕は激しく痛む頭を抱えながら、かつて神と呼ばれた先生のダイブを思い出していた。

552 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/15(土) 23:09:12 ID:9i+ck8Ib
「おじさんもしかしてダンカイセダイってやつでしょ?」

 矢田亜希子はそういうと僕の目を覗き込んで小さく笑いながら
人差し指でまぶたをそっとこすった。きれいな大きなアーモンド形をした
目がゆっくり瞬きをするのを見て、整形手術をしたのかもしれない、と思った。
以前にそういう癖をもった女を知っていたからだ。彼女もたえず目を触っていた。
まるで彼女の目がそこにあることを確かめているみたいに。

「べつになんの世代でもない。僕は僕という個人としてこの問題を考えたいんだ。」
「ほらね。そういうところダンカイじゃない。そんなに熱くなることもないのよ。
 押尾学はもう干されたのよ。そして永遠に損なわれたままにね。」
 
 彼女はそういうとまた人差指でまぶたを触り大きく瞬きをした。
「でもそれは誰にも止められないの。私にも、研音にも。」

553 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/15(土) 23:28:32 ID:9i+ck8Ib
僕は矢田亜紀子の髪にぬれた顔をうずめ、声を押し殺して泣いた。
どうして研音はあのろくでもないもこみちを
押尾の代わりに売り出すのだろうか?
もこみちがもこもこしているのはあんまり不公平じゃないか。

僕にわかっていることは何はともあれ自分が押尾学がいない世界を
受け入れなければならないということだけだった。
あの日ゲンダイの記者が押尾学をヤリチンと示唆したように
僕は彼のヤリチンをあるがままに受け入れる準備をしなければならなかった。
クールに。そして迅速に。

558 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/16(日) 20:36:30 ID:dqs+SKGI
僕はほとんど呆然となりながら机の引き出しを見つめていた。
そこには本来あり得ないはずの広大な空間が広がっていて、
その闇の深さは12月の冷たい夜空を連想させた。

あるいはこれは夢かもしれない。僕はそう思った。
「現実から目を逸らしてはいけない。これはとても重要なことなんだ」
僕はいささかうんざりしながら振り返った。
それは大小の球体を組み合わせたとしか言いようのない姿をしていて、
ユーモラスでありながら同時に不気味なその姿態は僕の心をざわざわと苛立たせた。

彼(と便宜的に呼称しておく)は突然僕の部屋に現れて、
頼みもしないのに僕と僕の子ども達の苦々しい未来について語り出した。

そして信じがたいことに――単に僕が信じたくないだけかもしれないが――
その恐ろしい運命を変えるためには、このコバルトブルーと純白にカラーリングされた
口うるさい機械の力を借りるより他に仕方ないと言うのだ。

現実的じゃない。「全然現実的じゃない」僕は呟いた。
「僕に言わせれば」と彼は断罪するような口調で言った。
「君のその非現実的な性格がそもそもの原因なんだよ」

564 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/19(水) 16:16:08 ID:puvnLgTf
「にいさん」僕は声に出して言ってみた。
その言葉はまるでタクラマカン砂漠の乾燥した砂のようにさらさらと舌の上を滑り落ちていった。
妻の弟や妹にそう呼ばれる度に僕はある種の苛立ちと、
自分のアイデンティティを揺さぶられるような不安定な感覚を覚えた。

もちろん彼らが好意的な意味合いで僕をそう呼んでいることは分かっている。
しかしそこにどういう意図が存在するのかが問題ではないのだ。

僕は君たちの兄さんじゃない。

一体どこで間違ったんだろう。そう問いかけてみても、
鏡の中の自分は血走った目で僕を見つめるだけで、何も答えてはくれなかった。

僕は婿養子に来たのではない。僕の性はフグ田で、妻の姓もフグ田になった。
当然のことだが、僕の息子の姓もフグ田だ。
 
しかしこの家の表札は磯野なのだ。それが現実だった。
所詮僕はこの海洋的ヒエラルキーの最下層に位置する一匹の魚に過ぎないのだ。

565 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/19(水) 17:52:29 ID:q2cKeSjf
「くだらないわね」彼女は呟いた。「あなたはそんなくだらないことを気にしていたの?」
彼女はひとつため息をつくと、いつものように鏡台に向かった。ネグリジェの裾がひらりと揺れた。
そしていつものように髪をカーラーでくるくると巻き上げ始めた。
僕はひたすら黙っていた。彼女が話すのを待った。布団の端に座りながら、奉行のお出ましを待つ農民みたいに辛抱強く耐えた。
ようやく彼女は再び口を開いた。
「いい?彼らにとって私は姉なの。何だったら戸籍で確かめてもいいわ。紛れもなく私は彼らの姉さんよ」
言いながら、彼女は指を動かし続けている。黒い髪は従順に巻き上げられ、彼女の頭頂部と耳の後ろにきっかりと纏められていく。
「だったらその夫であるあなたは、彼らの義理の兄よ。にいさん、と呼ばれて当然でしょう。それに異を唱える方がどうかしていると思う」
彼女はくるりと向き直り、僕の眼を見据えてはっきりと言う。
「カツオもワカメも悪くない。悪いのはあなたよ」
昭和的モダンさで髪を飾り白いネグリジェで僕を見下ろす彼女は、薄暗い神殿に君臨するギリシャの女神みたいに見えた。

566 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/19(水) 21:37:41 ID:SjrwsBeM
 おさかなくわえたドラ猫おっかけて」
 通勤途中の駅前で、そうつぶやく彼女に気がついたのは、その独特のヘアスタイルに見覚えがあったからだ。
「陽気でかけてく愉快なサザエさん。」
 みんなが笑っている。お日様も笑っている。僕は彼女の姿を直視できなかった。
 彼女は ほぼ35年の間、毎週日曜日にこのフレーズを繰り返し繰り返し唱えてきたのだ。
 彼女は深く傷つき、疲れきっていた。今は、こちらの世界とあちらの世界の狭間で彷徨している。
「ルールルルッルー 今日もいい天気ー!」
 いつしか僕は泣きじゃくりながら、彼女と一緒に叫ぶように唄っていた。

574 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/21(金) 21:23:43 ID:hpWw/dF4
画面の中ではまだ表情に幼さの残る織田裕二が
東幹久と松崎しげるを相手に、金銭の価値を熱っぽく説いていた。
また「お金がない」の再放送か。
僕は思った。

やれやれ、この3人が集まると画面が真っ黒じゃないか。

575 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/21(金) 23:49:24 ID:uB8Yl277
「クスクス。」
双子の片割れが、ベッドにもぐりこみながら笑った。
「世の中の人達って、随分良くテレビを見ているものなのね。」
「仕方がないよ。彼らだって何も好き好んで見ているわけじゃないさ。
 日曜に起きる、買い物に行く、帰ってリモコンを押す、
 すると『こんにちは、サザエです』と言われてしまうんだ。
 好むとも好まざるにかかわらず。
 そしてビールを飲みながらいつの間にかじゃんけんをしている。
 あるいはそこに映っているのは織田裕二かもしれない。
 みんな一緒さ。全部繋がってるんだ。嘘じゃない。」
「子犬に乳をあげている母犬みたいに?」
もう一方の片割れが、配水管を見つめながら言った。
「形而上的には、そうとも言える。」

やれやれ。
僕はいっきにビールを飲み干すと、テレビに向かってじゃんけんをした。

578 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 07:03:50 ID:FHbcXQRm
こんにちは。お久しぶりですね。元気にしてますか?

今日は、相談したいことがあってお手紙を書きました。
実は私、今キャバクラでアルバイトをしています。
こんなこと知ったら、あなたは眉をしかめるかもしれません。というか、そうするでしょう。
今すぐそんなことはやめろって、怒られちゃうかもしれませんね。
でも、仕方がなかったの。学費と生活費を稼がなきゃいけないし、
昼間のアルバイトだけじゃ、どうにも手が回らなくなってしまったの。
あなた知ってた?松屋でつゆが少ないってだけで物凄く怒るお客さんもいれば、
本屋のアルバイトがとても重労働だってこと。
清掃員のアルバイトで、毎日毎日大量のナプキンや、タンポンを素手で回収したり、
汚物を処理してたりすると、いろんなことが、どんどん麻痺していって、
自分が自分じゃないような気がして、私怖かったの。
夜のお店では、頭をからっぽにして、ニコニコしてお酒を作っていれば、お客さんは喜んでくれて。
慣れなくて怒られることも沢山あったけど、それでもなんとかやっていけたの。

でも、この間お店のオーナーに、僕の彼女になって欲しいって言われました。
何回か話す機会があって、私を気に入ってくれたみたいで、学費も面倒を見るって言ってくれました。
他にも会社を経営していて、とってもオカネモチの人。
でも、そういうのってちょっとひどいと思わない?
一介の従業員の私が、それにノーって言えると思う?食事の誘いを簡単に断れると思う?

どんどんわけのわからないことに巻き込まれていって、私、ひどく混乱してるの。
このまま私はどこへ行ってしまうんだろうって。

こんなつまらない話をしてごめんなさい。
冬も近づいてきたようです。あなたも風邪には気をつけてね。それでは。

579 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 08:05:05 ID:ecTrcvlf
>>578
「僕はこう思うんだ。」頭の中で明確な答えを探せぬまま、中途半端に声に出した。
「キャバクラで働くのは別に構わないよ。
 それは君の勝手だし、君だってそれなりの事情があってのことなんだからね。
 でも君に分かって欲しいのは、僕が君の仕事に理解を示しているとか、そんなことじゃないんだ。」

いったん口を閉じて飲みかけのコーヒーを啜り、タバコに火を点けながら彼女に対しての言葉を選択していた。

「そう、君に分かって欲しいのは『その場所』は君自身の意思とは無関係に、感覚が麻痺していく場所なんだ。
 そして色々なものが君を誘惑してくるだろう。」

こういうことに(村上春樹風に)慣れてない僕は、ひどく焦ってきていた。話を手短に終わらせようとしていた。

「つまり、つけ込まれないことだよ。君自身を消し去らないためにはね。」

話すのを終わらせた今、僕はひどく疲れているようだ。
やれやれ、こんなに長く書いたら叩いてくれと言っている様なものだな。

581 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 08:33:06 ID:FHbcXQRm
素敵なアドバイスをありがとう、>>579さん。
早く抜け出せるようがんばってみるわ、私自身を損なわないためにも。

582 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 09:03:20 ID:oLbMkbEm
581>>あなたはだけどホントいい人ですね。

587 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 22:38:14 ID:uj/V2rVQ
578のIDを読んで少し考え込んでしまう。
僕に何が出来るというわけではない。しかし彼女はすごく魅力的な女の子だ。
僕には彼女の行動を干渉する権利も能力も無いが、彼女には幸せになって欲しい。
動物園の陽だまりで昼寝をするアライグマのように。

646 :578:2005/11/02(水) 08:53:34 ID:EiF5wj8F
彼女は『固定ハンドルを名乗る』ことに対してひどく警戒しているようだった。
「いい?この2ちゃんねるというコミュニティーの中で『固定ハンドルを名乗る』ということは、
 生まれたてのヒナが巣から落ちてピーピー鳴いているのと同じ位危険なことなの。
 木の上では獰猛な猛禽類がいつも目を光らせているし、その甲高い泣き声を聞きつけて
 いつお腹を空かした肉食獣がやってくるかもわからない。長文レスも同様よ。
 でも、そんな二重のリスクを犯してでも、私はどうしても書きこまなくてはならなかったの。」
彼女は『どうしても』という部分を強調して言った。
「それは>>582と>>587にお礼が言いたかったから。
 私が良い人でもなければ、ましてや魅力的でもないわ。でもね、本当に嬉しかったの。
 私でも、動物園の陽だまりで昼寝をするアライグマみたいになれるかなって、
 一瞬でも思えて、毛羽立った心がとても安らいだから。」

647 :578:2005/11/02(水) 08:54:35 ID:EiF5wj8F
それから彼女はまたお店の話を始めた。
「最初に比べたら、随分慣れたと思うわ。私から提供できる話なんて、
 クロコダイルとアリゲーターの見分け方くらい。趣味は、なんて聞かれても、
 平日の午前中に上野動物園に行って、オオアリクイをぼんやり眺めることなんて言っても、
 なんとも言えない沈黙が流れるか、タバコの煙をを顔に吹きかけられてむせてしまうだけ。
 あの人達に、いくらモモイロペリカンのダイナミックさや、オカピが本当に本当に美しい動物だってこと、
 オオアリクイがどんなにキュートな動物かってこと、
 そして上野動物園が一番それらの動物を至近距離で見られるんだってことを一生懸命説明しても、
 どろんとした目で私を見返すだけ。私を見てはいるけど、そこに私は映ってないの。
 ノアの箱舟には、あの三種をまず乗せるべきだったっていう自論は、昔から変わらないわ。
 あと、ワニ。最近は行く暇もお金もないから、今もあの子達がいるかどうかはわからない。
 それよりは、最近のヒットチャートや血液型の話題、お互いの恋愛遍歴みたいなものが喜ばれるみたい。
 だから、最近は専らその話題。
 一つわかったことがあるけど、この世界では『嘘』が必要最低条件だってこと。
 でもね、日常的に嘘をついていると、いつの間にかそれが普通の生活にも侵食してきてしまうものなの。
 私はすでに何かを失ってしまったのかもしれないわ。でも、何かを失うことは、
 もしかしたら何かを得るということと同義なのかもしれない。あるいはその逆も。
 私が言いたいこと、わかる?」
なんとなく、と僕は答えた。

648 :578:2005/11/02(水) 08:58:06 ID:EiF5wj8F
僕は疲れていたが、糸の切れた操り人形みたいに、彼女はしゃべりっ放しだった。
「またこんな話をしてごめんなさい。でもあなたぐらいしか、本当に吐き出せる人がいないの。
 もう二度とこの話はしないわ。少しでも聞いてくれて、本当にありがとう。」
彼女はいささかセンチメンタルに、そしてヒステリックになり過ぎるているようだった。
でも、それは彼女自身もわかっているように思えた。
それでも地球は今日も周り続けている。本当に自転しているのかどうかは僕には正直わからない。
でもねじまき鳥がねじを巻く限り、きっと世界は終わらないのだろう。

583 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 17:11:03 ID:+5/pUmvc
「やれやれ。」

アイゼンハワーの時代からそこにあるような頑丈なオーク材のバーのカウンターで、
すっかりぬるくなったギネスのグラスの水滴をそっとぬぐいながら僕はつぶやいた。

 ギネスの隣に置かれた女性セブンには「芸能界を干されて矢田亜紀子、押尾学を連れて
反町隆史宅に駆け込んだ!」と高らかに書いてある。記事によると、矢田亜紀子と押尾学は
どうやら芸能界の黒幕(ドン)の逆鱗に触れ、共に追放されかかっているようであった。
幼い恋愛逃亡劇はやがて押尾学の事務所の先輩であり「アニキ」と慕っている
反町隆史宅で終わりを告げようとしてた。

584 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 17:11:39 ID:+5/pUmvc
反町に泣きついたってだめなんだ。

あの日濡れた顔をうずめた矢田亜紀子の髪のにおいを思い出しながら僕はそうつぶやいた。

反町なんてただのポイズンじゃないか。

僕はノルマンディ戦線に借り出された疲れた兵士のように
一歩もそのカウンターから動けそうもなかった。

バーテンダーがやがてそんな僕に気づき、
手元にある週刊誌を見ながらぎこちない笑顔でこう言った。

「言いたいこともいえない世の中じゃ...ポイズン。」

585 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/22(土) 17:33:49 ID:+5/pUmvc
やがてそのバーテンダーはキュッと口角を上げ僕に一礼して
新しいギネスを注ぐと、用心深い猫のように店の奥に引っ込んだ。

新しいギネスのクリィミーでミルキーな泡は「あなた様のお気持ちは察します。
でも仕方がないですよ、だって押尾も矢田もヤンキーあがりじゃないですか。
二人とも干される運命だったんです。」
とでも言いたげにお行儀よくいつまでもグラスに残って
僕を慰めようとしていた。

588 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/23(日) 23:09:54 ID:188Su9KJ
深夜PCの前に座り、あちこちのサイトを覗き込む僕に積極的な意思というもの
は何も無い。白濁とした意識の中、マウスとキーボードを押す音だけが深夜の静寂
の中に響いている。

こんな事はやめて、さっさとベッドの中に潜り込めばいいんだ。

しかし、それでもPCの前から離れる事は出来ない。機械的にマウスを動かす僕が
巷でいうところの「エロサイト」という所に進んでいたとしてもそれは別にそんな
気があるから進んでいるわけじゃない。眠ろうとする意識なんてまだ積極的な方だ。
今の僕は徹夜マージャンの後のような茫漠とした意識があるのみだ。

あるサイトをクリックすると、いきなり画面いっぱいに蟻の子みたいな法律用語が
広がる。

「あなたは、このサイトの会員として自動契約され、IPアドレスも登録されました。
 本日より3日以内に入会費として29.000円を下記の口座へお振込み下さい。入金が
 無き場合、当社の代理人に債権譲渡を行い強制執行をおこないます・・・・。」

やれやれ、今日も眠れないようだ。

591 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/24(月) 00:30:41 ID:8aQumOB9
「エロ本を買いに行くんだ」
陳腐なゲームに興じる僕に、友人は馬の陰茎のように力強く、こう言った。

「エロ本を買いに行くんだ」
それは、既にゲームの虜となっていた僕にひどくーそう、まるで腐った猿が三匹、僕の背中にしがみついているかのようにー重くのしかかった。
(エロ本なんて、どうでもいいじゃあないか)
そう、どうでもいいのだ。僕は今、関羽となって曹操の覇道を打ち砕くために刃を振るっている。
ポルノ雑誌の一冊や二冊、どうでもいいのだ。

「エロ本なんて、どうでもいいじゃあないか」
はっきりと声に出して言ってみた。だが、それは状況を覆すには少々心もとなく、曙の繰り出すジャブのように相手の心には届かなかった。

592 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/24(月) 00:31:51 ID:8aQumOB9
「お前はゲームに負けたんだ。罰ゲームとして、エロ本を買いに行く義務がお前にはあるんだ」
怒気をはらんだ口調で彼は言う。確かにその通りかもしれない。僕は確かにゲームに負けたし、
もちろん罰ゲームの内容も知っていた。だが、僕にとっては僕が関羽であるという一つの事実以外は、どうでもいいように思えた。
勉強も、罰ゲームも、自慰さえも、関羽という二文字の前には、その意味を失ってしまう。
周りの者は言葉こそ発しないが視線や、表情を読み取る限り彼に同調しているようだ。僕を取り囲む空気が冷たくなった。
世界が、僕の存在を否定しているように感じられた。

「罰ゲームに一体何の意味があると言うのか。誰も読もうとは思わないエロ本を何故買わなければいけないのか。
副菜なら君達は不自由しない程度には持っているはずだ。これはある種の暴力だ。惨たらしい、弾圧だ」
僕はかすれた声で精一杯に反抗を試みた。おそらく、僕と同じく彼らにとってもポルノ雑誌などどうでもいいものなんだろう。
彼らが望んでいるのは、馴染みのコンビニで「でらべっぴん」を申し訳なさそうに求める、瀕死の鶏のような滑稽な僕の姿なのだ。
不愉快な話だ。そんな事を考えていると冷たい液体が僕の顔で弾けた。顔をあげると、銃を構えた友人の姿が僕の目に映った。
僕は全てを理解した。ゆっくりと熱い息を吐き出し、そして吸い込む。たったそれだけの事をするのに僕はひどく時間を費やした。
あるいは、ただそう感じただけなのかもしれない。とにかく僕はそのあまりにひどい状況を受け入れたのだ。
オーケー、敗北を認めよう。桃園の誓いの代わりに罰ゲームを果たすことになるとは。やれやれ、全く不愉快な一日だ。

「やれやれ、全く不愉快な一日だ」僕はそう言い、がっくりと肩を落としながら玄関へ歩き出した。
冷たい液体が、僕の背中で弾けた。

春樹の本一冊も読んだことなかったんだけどこんなもんでいいのですか?

593 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/24(月) 00:57:25 ID:hYzfu5IQ
その真夜中、彼女がこう言った。
「ねえ、デラべっぴんを買ってきて欲しいの」
彼女はまるで思い出したかのように、テーブルから静かに顔を上げてそういった。
彼女はおそらくずっとその事を考えていたのだ。
彼女の舌の上で、何度も何度も転がされ続けたその言葉は、はっきりと僕の耳に聞こえた。

僕はなんと言い返せばいいのかわからなくて、ひどく混乱した。
鳩が豆鉄砲を食らった顔とはまさに今の僕の顔なのだろう。
彼女はゆっくり、かみ締めるようにまた言った。
「目的は言えないわ。ただ、あなたに買ってきて欲しいの。それも今すぐに」

僕はよく糊のきいたブルックスブラザーズのオックスフォードシャツを着込み、
アディダスのテニスシューズを履いて、本屋へ出かけた。
ロケットみたいな胸をした女の子が表紙の雑誌を持ってレジに行くと、
レジの女性は少し軽蔑した目線で僕を見た後、なるべく僕の手に触れないように釣りを僕に渡した。
その本を買い終えると僕はまたひどく混乱した。

やれやれ、なんだって僕がこんなものを買わなくちゃいけないんだ?
彼女はなんだってこんなものを買いに行かせたのだろう?

部屋に戻ると彼女はいなかった。
その時、僕はもう彼女がこの部屋に帰ってこない事に気づいていた。
デラべっぴんのページはなんだかごわごわしていた。
まるで僕の人生そのもののように、固く、滑らかで、そして遠くにあった。

596 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/24(月) 23:14:26 ID:1fkKt0bM
「デラべっぴん」
懐かしい響きだ。その名前には遠く過ぎ去った甘酸っぱい青春の思い出が込められている。
学生通りの古本屋の店頭に居並ぶちょっとB級のそれでも魅力的な女の子達。3冊位まとめ
て買い、帰りの電車の中でドキドキしながら、家路までの距離の長さを恨めしく思ったあの日。

「デラべっぴん」その名を知る人はきっと「トレーシーローズ」も知っているだろう。
青春のあの日の思い出・・・・・・。

597 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/24(月) 23:55:46 ID:hilTI73A
やれやれ。愚痴りに来てみたらデラべっぴんでスレは盛り上がっている。
外は雨が降っているし、猫はまだ帰ってこない。
宅配便の不在受付時間は終わっているし、会社は潰れそうだ。
僕は呟いた。
「デラべっぴん」
そこには昔、感じたようなエロスも感動もなかった。
「デ・ラ・べ・っ・ぴ・ん」
昨年、休刊してしまったエロ本の名前はもはや僕に何の気概も与えなかった。
女の子の秘密も透けブラもSEX講座も
まるで世界の裏側からやってくるピザの宅配のようにぼんやりとしている。

僕は自分の中で何かが損なわれてしまったことをようやく理解した。

601 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/25(火) 01:27:32 ID:e54w/v+b
「やれやれ」
やれやれ。
ここでもデラベッピンだ。僕は八方塞がりになってしまった。
青春の一時期を、巣作り中のキツツキのように情熱をそそいだデラベッピンは、僕の意識の内外で深く深く根を張って、その枝葉は天を突いているらしかった。
僕はそこまで考えて、部屋の明かりを全て消すとベッドに横たわった。こうしていると、忘れたくても忘れられない想いが闇から僕の頭へ侵入してくる。
けれども、今日という日だけはこの招かざる客たちを受け入れたくなった。
「そういえばあの時も」
そう、そういえばあの時もそうだった。

602 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/25(火) 09:28:15 ID:UojFDR1I
僕は言い知れようの無い不安に襲われた。
「デラべっぴんが休刊だって?」
まさか、僕らの青春を象徴するあの雑誌がなくなるなんて夢にも思わなかった。
一冊の雑誌に群がる無数の男子学生、それを遠巻きに見つめながら「いやねぇ男子って」と眉をひそめる女子学生。
どこにでもある光景だがそれが「デラべっぴん」であると言うだけで話は変わるのだ。
1流のモデルより、その辺のちょっと魅力的な子の方が性に合うという事にはじめて気付かされた。
つまり女子学生としても別に「デラべっぴん」を読み漁る男子学生の事を心底嫌がってる訳じゃなく、
自らも「デラべっぴん」のように男子学生の人気の的になれるのではないだろうか、
むしろ積極的にポジションの入替を狙い色気を身につけようと思い切磋琢磨していく、そんな大人への変化をもたらす触媒のようなものなのだ。
やれやれ。仕事中に何を考えているんだ、僕は。
今日、仕事を終えたらデラべっぴんのバックナンバーを眺めながら酒でも飲むとしよう。記憶がなくなるまで。

604 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/25(火) 11:50:38 ID:bUvS4/c6
このスレの住人でオフ会を開いたら

挨拶は「やれやれ。」

バーでピスタチオをつまみながらビールを飲み始め、しばし歓談。

参加者が連れてきた猫がいつのまにかいなくなる。

みんなで捜索。

結局見つからず、地下鉄の入り口で「松・竹・梅」の統計を取り始める。

飽きて来て、男性参加者が井戸に潜り始める。

女性参加者全員失踪。

「ノルウェイの森」を口ずさみながら解散。

605 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/25(火) 17:16:49 ID:KGgov02s
>>604
羊のかぶりものをする者が1人くらいはいる。

609 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/26(水) 01:26:00 ID:9eZAXTJy
部屋へ行くまでに、道に迷って意識がどこかへ飛んでしまう人とか出そうw

610 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/26(水) 09:02:28 ID:qZhLI83N
通報されそうな集団だな

615 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/27(木) 01:28:40 ID:aafU3n5h
「難しい事は言わずにみんな自由になればいいのよ。そう私達は泥の中から生まれて
 泥の中に帰ってゆくのだから。」

619 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/27(木) 19:48:49 ID:FYuvHos2
「そう、私達は皆泥の中から生まれて泥の中に帰っていくのよ」

(有明海、ムツゴロウ談)

620 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/28(金) 00:11:30 ID:3UUXztqI
駅から降りると今日は、その正面にあるパチンコ屋の喧騒が気になり、ふと立ち寄ってみたくなった。
普段はパチンコなんてほとんどしない。大量の玉が軋む音、人いきれ、煙草の煙の蒸れたにおい。
どれも僕の普段の生活の空気とはかけ離れたものだ。

それでも、今日に限って入ってみたくなったのは、もしかしたらある予感があったのかもしれない。

店の中を見渡していくと、色々な種類の台が目に留まる。「大海物語」「大工の玄さん」「水戸黄門」
「ウルトラセブン」・・・・。どの台で打ってみようという気も起こらず、店を出ようかとも考えた。
出口の近くまで歩き、ふと見ると見覚えのあるアニメを模したパチンコ台が目にとまった。

「CR未来少年コナン」

やれやれ、こんなおおよそパチンコとは縁が無いようなアニメもパチンコ台になる様になったのか。
僕はそのアニメが好きで良く見ていたがNHKで放映されていたし、監督である宮崎駿もこんな
過剰な資本主義、大量消費を具現化したようなパチンコ屋なんかは一番毛嫌いする様な人だった。

時代も変わったものだ。

そう思いながらも僕はその絵柄に懐かしさを覚え、その内の一台の台を打って見る事にした。
幸運な事に2000円を投入した時点で、画面は突然嵐になったかと思うと、ギガントが浮上し、
確変大当たりを引き当てた。店内の喧騒には苛立ちを覚え、僕は何事も無かったような不機嫌
な顔を正面のパチンコ台に向けたが口元には笑みがこぼれていた。
15Rが終了し、手元の透明なケースが満杯になった頃、突然画面にラナが現れた。
そして、アニメの「ムーミン」に出てくるミーみたいな、しゃがれた声でこう言った。

「もう1回よ!」

違う!!!ラナはこんな声なんかじゃ無い!!僕は突然立ち上がり、目の前の満杯になったケースを
ぶちまけるとそのまま店を飛び出し、声にならない声で夜の街を駆け出していった。

(もったいない事をした。)

627 :おさかなくわえた名無しさん :2005/10/29(土) 23:16:39 ID:8550NKqz
「そう、私達は十分でわかりあう事ができるわ。」
「わかりあえる?」
「気持ちがよ。」
「陰毛がまだ濡れているのよ。あたたかくてしっとりと湿ってるの。真っ黒でやわらかいの。撫でてみて、
その下の方もずっとあたたかいのよ。まるであたためたバタークリームみたいにね。すごくあたたかいの。本当よ。」

やれやれ、本棚の場所が間違っていたみたいだ。

そう言って僕はその本を、川上宗薫の「女子大生テニスコートの恥辱」の隣に移し変えた。

680 :おさかなくわえた名無しさん :2005/11/28(月) 23:14:34 ID:Yam98sAp
 実に18年ぶりくらいに村上春樹が読みたくなった。村上春樹という作家を
簡単に説明するなら、実にクールな文体で喪失感とノスタルジーを表現する
数少ない作家の一人と言える。1987年の春から秋にかけ僕はまるで砂漠が水
を吸い込むかの様に村上春樹を片っ端から読み漁った。1987年、まだ携帯
電話もなく、街にはつまらないユーロビートと寝惚けたようなプールバーが
溢れていた時代だ。
 当時、彼の小説の登場人物に病的に憧れた。そして実際自分が彼の小説の
登場人物のような不完全な大人に育ってしまった事に最近気付いた。

 18年ぶりに黄色くなった文庫本の埃を払って読み返してみると、文章から
受けるイメージが当時と全く変わってしまったことに少なからず驚いた。
何故かは分からない。ただ、当時の僕はまだ大人になるという事の意味など
考える必然性もなく、ただ漠然とその小説の主人公の生き方がスタイリッ
シュで恰好良いと感じていた。でも今は主人公の得も言われぬ喪失感、致命
的な孤独感を手に取るように感じる事が出来る。なんで当時そんなモノに
憧れていたのだろう?何か他のモノと間違えていたのかも知れない。

681 :おさかなくわえた名無しさん :2005/12/07(水) 10:09:14 ID:nfeaBQG8
昨日の夜、僕はコインランドリーに行った。家にはもちろん洗濯機はある。
でもあいにく僕の家の洗濯機は壊れている。

本当は大家に電話さえすれば、このアパートと契約している黒人の電気修理屋さんが、
まるでゲーム前のクオーターバックのように自信いっぱいの笑顔をうかべて
朝一番にやってくる。そして彼はきっとこのように言うだろう。

「だからいっただろ。この洗濯機はヨーロッパ製でとびきりデリケートなのさ。
オヴァーロードしちゃいけないんだよ。アメリカンガールとは違うのさ。」

でもあの夜はボストンに住んでいる大家にわざわざ電話するのも面倒だった。
ボストンは僕のアパートがある西海岸よりも時差があるからきっと夜中だし、
僕の大家は最近お母さんを癌でなくしたばかりだった。

だからあの夜はカフカ的な陰惨さがただようコインランドリーに行き
ブリトーの食べかけを払いよけながら誰が読んだかわからない雑誌を拾い上げ、
とにかく2時間あまり暇をつぶそうとあたりを見回した。

682 :おさかなくわえた名無しさん :2005/12/07(水) 10:11:23 ID:nfeaBQG8
コインランドリーの横には、洗濯物が乾くまでの時間をもてあます客相手の
小さなカフェが併設されており、古いテーブルと誰かが引越しのときに置いていった
けばけばしい紫のソファが置いてあった。

アイゼンハワーの時代からあるようなオーク材のテーブルの上には
9月号のNew Yorkerがおいてあった。ふと見ると
THE KIDNEY-SHAPED STONE THAT MOVES EVERY DAY by Haruki Murakami
と書かれたフィクションのページが開いてあった。

僕がふとそれに手を伸ばそうとする、後ろからふいに「No!」という声がした。

若い白人の女性があわててその雑誌を抱え、人懐っこい笑顔をうかべながら
すまなそうに話しかけてきた。

「今それを読んでいたところなの。ちょっとトイレに行ってもどってきたところなんだけど。」

「いや、いいんだ。ちょっとおもしろそうな題名だったから。」

「ハルッキ ムラカムの小説なのよ。ムラカムの作品読んだことある?これ読み終えたら
すぐに渡してあげるわよ。」

ムラカム? やれやれ。まるで中東の人みたいじゃないか。

687 :おさかなくわえた名無しさん :2005/12/21(水) 17:37:02 ID:dIF0k4Ok
「とにかくね、僕は今絶望しているんだよ」

ボサボサの頭を掻きながら彼は言った

「そりゃあね、まったく将来のことを考えずに適当な大学に入った僕が悪かったと思うよ
だけど僕はもう何一つとして希望が持てないのさ。ライオンから逃げる草食動物のように僕はずっと現実逃避しているんだよ」

彼はどうしてこんなことになったのか皆目検討がつかないようだった。
大学に入学してすぐに風邪をひいて友達をつくる切っ掛けを逃したのが悪かったのか
にぎやかな校内で彼だけが沈んでいたように思えた、そして気がつけば単位一つとらずに休学していたのだ。

「郷里の母がね、今月中に今後どうするか決めろと言うんだよ。
大学に行きつづけるのなら仕送りを続ける。そうでなければ仕送りは止めるので一人で生きていけってね。
ああ、解ってる。何もかも僕の根性が腐りきってるのが原因だってね。でも、もう僕は考えることさえ止めたいのさ。
生まれた時に誰かが使命を与えてくれればよかったのに、それか神に対しての悪魔のような絶対悪があれば戦ったのに。
僕はもう自分が何をしたいか、何をすればいいかがわからないのさ。
時々思うんだよ、ソーダ水の泡のようにシュワッと消えれたらなって。」

僕は復刻堂のシャンペリサイダーを飲みながら言った

「すべての原因は君のなかにあるのさ、僕の言いたいこと、わかるかい?」

彼はずっと押し黙っていた。
やれやれ、きっと彼はこれから、死のうにも死ねず惰性で生きていくのだ。

689 :おさかなくわえた名無しさん :2005/12/22(木) 11:20:48 ID:5LcZo9Rr
な~んか春樹の文章って気持ち悪いんだよな・・・。
無駄に達観して悦に逝ってるというか、そのわりに変に生温いというか。
悪い意味で青臭い。

690 :おさかなくわえた名無しさん :2005/12/22(木) 19:09:14 ID:t+tN9old
「空気を読めない人ってどこにでもいるのよ」と彼女は言った。
多分その通りなのだろう。でも僕はそういう種類の無神経さが大嫌いなのだ。

691 :おさかなくわえた名無しさん :2005/12/22(木) 19:54:33 ID:3vg2/qRH
「空気を読むのよ。」
僕の中のみといせい子がおごそかにつぶやいた気がした。

「空気を読まないと押尾学みたいにこの世界から干されるのよ。
クールに、そして確実に。」

でもこの春樹スレで空気を読むには実際は至難の業なのだ。
そして満月の夜には何人もの2ちゃんねらーが虫けらみたいに殺されていくんだ。

なあ、押尾学、ここは本当にひどい所だよ。
空気をよめないかわいそうな人たちが、涙を流すひまもないくらい
あっという間に消えていくんだ。まるで屠殺所みたいに。

「かっこう。」
僕の中で押尾学がそうつぶやいた。

718 :おさかなくわえた名無しさん :2006/01/11(水) 20:28:47 ID:7wA/itvR
もう一度押尾学について書く。そしてこれが最後だ。
僕はなぜそんなに押尾学にひかれるんだろう?

たとえば「押尾学 近所でのあだ名は うんこまん」とか
「押尾学、芸能界クビで格闘家デビュー間近?押尾学・ボブ・サップと激突! 」
とか書かれたタブロイドをご丁寧に切り抜いたりしてしまう。

ある種の人がベースボールカードを何十年にもわたってコレクションしたりするように
それはもう僕にとっては偉大な宗教をあがめるための神妙な儀式でさえある。

「それはあなたが中二病だからよ。」亜希子がくすくす笑いながらそう言った。
「わからないな。」
「あなたも押尾学もあきらかに中二病にかかっているのよ。
そしてそれはもう誰にもとめることができないの。」
 彼女は飲みかけのブラッディーマリーを置きながらそう厳かに言った。
「たとえばあなたは日本語が嫌いで、というか日本というシステムそのものが嫌いで
英語で小説を書いてから日本語に訳した。その処女小説の新人賞受賞パーティーで
スーツを着なければならなくなって、新品のスーツをわざと洗濯でしわくちゃにして
スニーカーで登場した。それってロックよね。」そう言うと彼女は僕の手の甲に奇妙な記号を
描きはじめた。

「たとえば米軍基地で修行した押尾学がハードコアーをひっさげて
日本の音楽シーンをROCKしてやると本気で思っていた。そしてタモさんの前で
なぜかスカを演奏してダイブをした。」そう言うと彼女は思い出すかのようににっこり笑った。

「つまり僕も押尾学も、他者とは違うアイディンティティ確立をしようとするあまり
やさぐれたり痛い行動をとっているということかい?単に中学2年生くらいの
ばか思春期にありがちな。」

彼女はブラッディマリーをのみながら微笑みそして僕の手に奇妙な記号を書き続けた。                       

やれやれ。僕は立派な中二病だ。そしてこのレスに集う人たちも。

737 :おさかなくわえた名無しさん :2006/01/23(月) 15:32:57 ID:hoW+Pqpe
ぼくはただ、純粋に金と地位と名誉が欲しかっただけなのだ。
この三つがあれば手に入らないものなんてない。
現代日本社会にあっては、貧民に多少の金とディズニーランド的幻想を与えておくだけで、
面白いほど金が転がり込む。昔からそうだし、今もそうだし、これからもそうあるべきなのだ。
でもそれをよく思わないものもいる。例えば東京地検。


三木谷、ここはひどいインターネットだよ、と僕は言った。
みんな僕のことを好き放題叩くんだ。信じられるかい?僕の顔のAAだってあるんだぜ?
もちろん誰も応えなかった。やれやれ、僕の味方はどこにもいないんだ。


もちろんこの高度資本主義的蟻塚にあっては、僕の擁護をする人間も多少はいる。
しかし彼らは、僕に投資をして損をしたという現実を直視したくないだけの貧乏人か、
頭の悪い中学生だけだ。今回の騒動を政治的陰謀とすら言い出す始末だ。政治的陰謀・・・。

740 :おさかなくわえた名無しさん :2006/01/26(木) 10:02:05 ID:YOJbUpsg
あんなことができたらどんなにいいだろう。

あの頃僕は思っていた。できたらどんなにいいだろうかと。

あんな夢やこんな夢があの頃僕には数え切れないほどあったのだ。

相棒は僕の夢を一つ残らず叶えてくれた。一つ残らず、だ。

彼は素敵なポケットを持っていた。とてもとても素敵なポケットだ。

自由?あの頃の僕らに自由なんてものがあっただろうか?

だけど僕らは自由に空を飛びたかった。これは欲求であり、渇望であり、

藤子不二雄的に表現したとしたら、夢だった。

相棒は僕に言った。

「これがタケコプターさ」

オーケー認めよう。僕は今なら断言できる。

僕は相棒を120パーセント愛していた。

752 :おさかなくわえた名無しさん :2006/02/01(水) 00:03:46 ID:YuBXlzsb
村上春樹は神だと思っている。
7年ほど前の正月休みに両親と芦屋市の村上春樹実家(もんじゃ焼き屋)に
食べに行った時の話。
両親と3人で鉄板を囲んで食事をしているといきなりキング春樹が
玄関から入ってきた。もんじゃ焼き屋に似合わないイタリアンないでたちで。
村上春樹が「俺いつもの~」と言って二階へ上がろうとすると、
店内にいた高校生集団が「村上さん!」「春樹さんかっけー!」などと
騒ぎ出し、村上春樹が戻ってきてくれて即席サイン会になった。
店内に13、4人ほど居合わせた客全員に店内にあった色紙を使い
サインをしてくれた。
高校生達が村上春樹の母校神戸高校のサッカー部だとわかった春樹は
いい笑顔で会話を交わしていた。
そして村上春樹は「やれやれ」と二階に上がっていき、店内は静かになった。
私と両親は村上春樹の気さくさとかっこよさに興奮しつつ
食事を終え、会計を済ませようとレジに向かうと、店員さん(村上春樹妹)が
階段の上を指差しながら
「今日のお客さんの分は出してくれましたから。また来てくださいね」と。
あれには本当にびっくりした。

759 :おさかなくわえた名無しさん :2006/02/05(日) 09:20:59 ID:tJekHtHB
店先に並んだこのUFOキャッチャーをしていると、
目的もなく列車か何かに乗っているような気分になる。
ガラスに反射するプライズや店の風景や使ったコインや飲み干してきた缶コーヒーやら
見慣れた街並が、ここに立ち続ける僕を残して、どんどんと後ろに過ぎ去ってゆく。
ここにいるかぎり――どこまでいったって、たいして変わりばえのしない景色だ。
・・・昔はずいぶん素敵な世界みたいに思えたものだけどな。
隣に乗っている相手だけが時折変わる。
そのとき僕の左に立っていたのは、3日前に知り合った同じ大学の女の子だった。
「人形でも取ってあげようか」と僕は言う。
「ありがとう」と彼女は言う。「親切なのね」
・・・親切なわけじゃないんだ、僕は苦笑する。
ただ、僕は今までずっとこの機械を動かし続けてきたというだけの事なんだよ。
ポケットのコインを数えるのにも飽きた
そんな12年目の

アーケード・ゲーマー。

今も僕は、この列車に乗り続けている。

768 :おさかなくわえた名無しさん :2006/02/14(火) 22:21:09 ID:Hz/sUY9l
「押尾学のことはもう忘れるっていったじゃない。もうこのスレでは
2度と書かない、って。」

亜希子はピスタチオの皮を威勢よくわりながらうんざりした顔で言った。

「いや、押尾学の話じゃないんだ。今度はトリノオリンピック 
スノーボーディング女子代表の今井メロ選手のことなんだよ。

僕は彼女のことをどうしても救いたいんだよ。ニュースで繰り返し
流される今井メロのどうしょもないラップを聞いたときに啓示的に
そう思ったんだよ。

そして彼女のへたくそなラップを半笑いしながら見つめる
スノーボードスポンサーのスーツ男を見ているうちに
それは確信のようなものに代わっていったんだと思う。」

「押尾学も今井メロも小さいころからスポイルされつづけたのよ。
まるで生まれたての芝生が夏の暑い日ざしにじりじりと照りつけられるみたいに
彼らの自我も徹底的にスポイルされてしまったの。

そしてそれはもう誰にも止められないの。
まるでジャイアンリサイタルみたいに。」

亜希子はそう言うとこの日何十個目かのピスタチオを威勢良く割った。

やれやれ。

780 :おさかなくわえた名無しさん :2006/02/23(木) 14:13:05 ID:sdiVkrHl
面接官「特技は村上春樹とありますが?」
学生 「まあ、村上春樹ですね。」
面接官「村上春樹とは何のことですか?」
学生 「作家です。」
面接官「え、作家?」
学生 「はい。作家です。島本さんの足に大ダメージを与えます。」
面接官「・・・で、その島本さんの足は当社において働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」
学生 「はい。やみくろが襲って来ても守れます。」
面接官「いや、当社に襲ってくるような地下生物はいません。それに地下鉄でキセルをするのは犯罪ですよね。」
学生 「でも、ジョニー・ウォーカーさんにも勝てますよ。」
面接官「いや、勝つとかそういう問題じゃなくてですね・・・」
学生 「208号室で見てはならないものをバットで殴り殺すんですよ。」
面接官「ふざけないでください。それに208号室って何ですか。だいたい・・・」
学生 「208というのは双子の片割れです。僕は双子とピンボール台を捜す旅に出るのです。ピンボールというのは・・・」
面接官「聞いてません。帰って下さい。」
学生 「あれあれ?怒らせていいんですか?僕はあなたの仮面の下にあるもののことをよく知っているし、その気になればそれを暴くこともできると。」
面接官「いいですよ。暴いてください。その仮面の下の正体とやらを。それで満足したら帰って下さい。」
学生 「運がよかったな。君は彼女を手に入れた。」
面接官「やれやれ。」

828 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/02(日) 08:51:55 ID:lUz3vROE
ハロー!おまんこ野郎達
僕の足は臭いです!

829 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/02(日) 12:27:50 ID:e05DPYjb
ある日曜日の昼に、僕は上手く茹で上げたスパゲティーを食べながら、
この掲示板をぼんやり読んでいた。

>828に「ハロー!」と僕は投げやりにつぶやいた。
僕はおまんこが大好き野郎で、足も臭うのに、
なぜ 828 は このような自己主張をするのかと言う事にしばらく思いを巡らしてみた。

日曜日の午前9時に、煽る言葉を投げかけてくる。

僕には、その人の人生や生活が想像出来なかった。
僕はデタッチメントを求めているのに、
828 はコミットメントを僕たちに求めてる。

やれやれ、僕には牛の胃の中に住んでいる原生動物の人生・生活が理解出来ないのと同じ位に理解出来なかった。

830 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/03(月) 07:18:59 ID:t1/Ey4hx
>>829
即レスチアーズ!君は星の形をしてるよ☆
僕の過去現在未来をよろしく!

831 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/03(月) 19:54:42 ID:egux7CE2
僕はこのスレを心の底で密かに応援していた。

窓の外は宝石をちりばめた様な夜景が広がっているが
それとは対称的に僕の心は沈んでいた。
そして暗い気持ちを引きずったまま何気なくこのスレを覗いてみた。

僕は職人気質の>>829をとても応援したいと思った。
そして>>830に目を走らせた。
やれやれ、何だこのテンションは…
とてもじゃないがこのハイテンションにはついて行けない
僕は何もかもがどうでも良くなった。

832 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/04(火) 04:11:56 ID:uZtXpZh9
>>831
ふーんふふーふんふふーふふーん
ふふーふーんふーんふファーーーック!!!

833 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/04(火) 20:21:57 ID:5WdtdRep
オーケー、どうやら僕は失恋したようだ。
今頃僕が存在していないような顔をして、社会生活を送る彼を思うと胸が張り裂けそうだ。
「ばっかみたい、寂しいなら今までしてきたように、また次の相手を選べばいいだけじゃない」
彼女はそう鼻で笑うと僕のつま先をぺろりと舐めた。
確かにそうかもしれない、けれど当面は無理だろう。
僕はあの時彼と寝るべきだったんだろうか?それとも泣いて縋ればよかったのか?
時計は時を刻み続けている。
タルップ・ク・シャウス、と。

834 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/05(水) 12:12:02 ID:THhWnQkY
オーケー、833は確かに失恋したようだ
認めよう

そして832を処理する能力が僕には無い…
それも認めよう

844 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/11(火) 21:55:47 ID:W28lDEun
僕は必要な物をリストアップし、ひとつずつ丁寧にキャンバス地のリュックサックに詰め込んでいく。
ビニールシート、個別包装の割り箸、ビール、つまみ、取り分け皿、そして
ドーナツ型のクッション。

「ドーナツ型のクッション?―あなた痔なの?」
直子は馬鹿にする風でもなく平坦な声で言った。

花見に限らず、宴席には必ずドーナツ型のクッションが必要だ。
しかし本当の理由を述べるのが今夜はひどく面倒に思えた僕は、
短く「ああ」とだけ答える。

845 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/12(水) 12:09:05 ID:DC7LkUK7
僕はディスプレイから目をそらし、溜息をつきながら窓の外を見た。
昨夜から降り続いた雨は上がり、薄く日が射している。
桜を見に行くのなら今だろう。
僕は机の脇に置いてある、埃をかぶった携帯ラジオを手に取った。

「せっかくの春だというのに、こう雨ばかりじゃ沈んでしまうね。
そんな君達にもっと悪い報せがある。この雨はどうやら長引きそうだ。
でも僕は・君達を・愛している」

オーケー、君のせいじゃない、と僕は呟いた。

844は、昨日花見に行ったのだろうか。ドーナツ型のクッションを持って?
何故彼がドーナツ型のクッションに固執するのか、僕にはわからない。
それどころか僕は、844の居場所も、本名も、
歯列矯正の経験があるかどうかもわからないのだ。
わかるのは、「僕は844の事を何もわかっていない」という事だけだ。

やれやれ。
僕がこの掲示板を覗くという行為は、
不毛の大地になんとなく鍬を振り下ろすようなものだ。
どれだけ耕しても、作物が実を結ぶ事はない。

846 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/12(水) 12:15:02 ID:CQCkVZss
「ドーナツ型クッション?宴会に必ず持参するの?」
この人変態なのかしら。
週末は花見コンパだわ、どうかドーナツ型クッション男に出くわしませんように。

848 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/12(水) 13:24:01 ID:3Eb7zzc3
小雨が降り続く中、僕は白いテニスシューズを下ろす。
もしここに母親がいたら、天候や暦の悪い日に靴を下ろすことを反対するだろう。
しかしここにはいない。
何重にも縛ったゴミ袋をたやすく開け、「まだ着られるわよ」と
捨てたはずの洋服をハンガーに吊るす母親は、ここには、いない。

僕は深呼吸し、昨夜場所取りをしておいた、土手にいくと、
ドーナツ型のクッションは雨に濡れていた。
やれやれ。
僕は硬くごつごつした幹の上に腰掛け考えていた。
しかしいつまで経っても、845がなぜ
僕が歯列矯正をしていることを知っているのかはわかりそうもなかった。

「やっと止んだわね」
顔を上げると、離れたところに放置しているドーナツ型クッションが
僕の所持品だと知らぬ846が微笑んでいた。

850 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 13:16:18 ID:wFo1U1Zv
そうしてドーナツ型クッションを小脇に抱えた。
その瞬間、僕の前に暗闇が広がった、気がした。
暗闇?

また羊男が現れたのだ。

852 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 19:21:33 ID:+b0fgsIS
「ねぇ~、なぜ君はぁ~、ドーナツ型のクッションがぁ~、好きなのかぁ~、わかってる
かなぁ~?」と、羊男が手をヒラヒラと動かしながら尋ねてきた。
「痔だからとかさ~、地面が冷たいからとかじゃなくて~、本当の理由だよぉ~。」と、
言いながら、羊男は東京音頭を踊っていた。

本当の理由?
僕は脇に挟んだクッションをじっと見た。
どこからか、東京音頭が流れていた。

本当の理由は・・・

853 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 20:13:51 ID:UnhW4K2z
ドーナツにはなぜ穴があるのか…
それを考えれば自ずと道は
開かれるのではなかろうか

854 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 20:35:54 ID:QDUmcQRQ
ドーナツには何故穴があるのか―
僕は「それはドーナツ生地を揚げるとき、むらなく火が通りやすいからだ」と
マジレスすべきか迷っていた。

口を開きかけた瞬間、さっきのアルコールのせいで喉がからからに渇いていたことに気づいた。
やれやれ。ここで唯一水気を帯びているのは、このクッションくらいのものなのだ。

僕は濡れたクッションをゆっくりと裏返し、弧を描く縫い目をなぞってみる。
白い小さなタグに、朱色の検印が押されている。
乾いた手のひらに湿り気が染み込むのを感じながら、縫製工場の劉さんのことを考えた。

艶々の黒髪を白い帽子にしまいこみ、不繊毛マスク(商品に髪や鼻毛が付着することを防ぐためであろう)
をつけた、顔にも身体にも無駄な肉のない女子留学生を思い浮かべる。
ドーナツ型に裁断されたパイル生地が2枚ひと組ずつ、大きな段ボール箱に積まれている。
ぬいしろの分、大きめに裁断された生地を自動ミシンで縫う。
・・・・
ファスナーを縫い付け、ひっくり返し、一回り小さなドーナツ型のウレタンフォームを
詰め、ほつれや汚れなどがないことを確認し検印を押し袋に詰める―

突然ドーナツの穴に吸い込まれるような感覚に襲われ辺りを見回した。

夜桜に目もくれず騒いでいる学生たちは誰一人知る顔がなかった。
羊男はもういない。

855 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 20:38:51 ID:NQ4L4Dv8
ぼくはドーナツ型クッションについて考えてみた。
しかしどれだけ考えてもドーナツ型クッションはドーナツ型クッションのままとして
僕の頭の中に内在していた。

「やれやれ」と僕はつぶやいた。「いったいなんだってドーナツ型クッションに意味があるんだい?」
しかし、羊男は僕の言葉を無視して東京音頭を踊り続けていた。
僕はため息をつき、もう一度ドーナツ型クッションについて考えることにした。

ベージュ。2500円。布製。メイド・イン・アメリカ。ドーナツ型。穴。

「穴?」僕はそう口に出すと羊男は踊るのをピタッと止めた。
「ドーナツには穴がある。ドーナツが無ければ穴は存在しない。そして穴が無ければドーナツは存在しない。
ドーナツと穴はお互いに支えあいながら存在しているんだ。まるでクマノミとイソギンチャクのようにね。」

羊男はヒクヒクと耳を動かしながら僕の言葉の続きを待っていた。

856 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 21:03:18 ID:QDUmcQRQ
「邪魔するつもりはなかったんだよ」
855に向かってつぶやいた。
「軌道修正を試みたかっただけなんだ」

オーケー、認めよう。
僕が何の気なしに持ち出したドーナツ型クッションのせいで
「春樹風」に各々の愚痴を書き込むというスレ趣旨から逸脱したことを。
そしてドーナツ型クッションなど持っていないこと、製造工程など
知るすべのないことは飲み込んだ。


857 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 21:25:07 ID:NQ4L4Dv8
「気にすることはないさ」と僕は865に言った。
「僕たちがドーナツ型クッションのおかげで楽しめたことは事実なんだ。」

こういうことは忘れるに限る。そして完全にそれを忘れ去ったとき、
ドーナツ型クッションの意味は終わる。
パチン・・・・・・OFF。

858 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 22:28:07 ID:wsaooaf6
でも、あなたは間違っているわ。
865じゃなく856と言いたかったんじゃないのかしら。

859 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/13(木) 23:26:58 ID:z4WpQadl
まさに858の言う通りだ。
僕はそれを口に出して言おうと試みたが、東京音頭の音量に掻き消されてしまった。
「やれやれ」と僕は心の中で繰り返した。

861 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/14(金) 09:51:49 ID:q4BW6h5o
「さて」と僕は呟いた。
「確かに今日は僕の誕生日だ。
でも君は、それを知っていて今晩僕を誘ったのかい?」
「当たり前じゃない。今日はあなたの誕生日でしょ?
私がそれを知らないで今晩あなたを誘ったとでも思っているの?」
彼女はまるで、僕が何か重大な間違いを犯したかのような口振りでそう言った。

「一年が365日あるとしてよ?
あなたの誕生日はその中のたった一日、今日しかないの。
今まで私は何回あなたを誘った事があるかしら?・・・ゼロよ。
その私が、たまたまあなたの誕生日に誘いをかけるなんて、
一体どれだけの確率だと思っているの?」
「一年が365日あるとして」と僕は言った。
「365分の1だ。でもそれって、そんなにすごい確率というわけでもない」
「ねぇ、私は別にあなたの確率論を聞きたいわけじゃないのよ」
いらついたように彼女は言った。
「オーケーって言いなさいよ。それってあなたの口癖でしょう?」
「オーケー」
僕は慌てて言った。
「誘ってくれて嬉しいよ。今日は帰ってから
植木に水をやらなきゃならなかったんだけど、少し待ってもらう事にする」
「じゃあ、八時に」
彼女はそう言って、満足そうに微笑んだ。

やれやれ。
僕は、運転免許の更新と資格試験の申込みの手数料で
昨日討ち死にした財布を覗き込んだ。
「すまない、戦友」と財布が言った。
「いいんだ。君のせいじゃない」と僕は呟いた。

862 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/14(金) 10:47:49 ID:eaDLSNKN
「恋愛沙汰があるだけいいさ。今日僕がすることといったら犬の散歩くらいのものだ。」
口を開きかけたが、虚しさが増す行為と気づき遣りどころのないため息をついた。

誕生日と知って、初めて誘ってきた女の子と食事する場合、
会計はどちらが持つべきなのだろうか。
マクドナルドで乾杯というわけには行かないだろう。
僕は見知らぬ861の懐が気がかりだった。

僕はディスプレイを見つめつつも、背中に火がつきそうなジリジリとした視線を感じ始めた。
振り向くと濡れた黒い瞳ががぎらぎらと輝いている。
やれやれ。10キロコースに出掛けるとするか。

864 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/14(金) 12:42:18 ID:q4BW6h5o
全く862の言う通りなのだ。
いくら自分の誕生日だからと言って、
まさか女の子に会計を任せるわけにはいかないだろう、というのが
今の僕の最大の懸案事項なのだ。

僕は何人かの友人にメールを入れてみた。
恥ずかしい話だが、金を無心する為だ。
しかしまるでピスタチオの殻を投げ付けるように
全員から「死ね」という返事が返ってきた。
やれやれ、こういう場合の彼等には普段にはない連帯感がある。

僕は足元に積もったピスタチオの殻を踏みにじりながら、思案に暮れた。
タイムリミットが、僕を嘲笑うかのように迫ってくる。

865 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/14(金) 15:43:45 ID:HmEEmxVc
「ねえ、どうして君は見栄を張るんだろう」彼は言った。
「見栄?」僕は驚いて振り返った。「僕は見栄なんて張っていない」
「いや、張っているね」赤く塗った唇をへの字に曲げ、彼は続けた。
「否定するのなら、もう一度財布を覗いてごらん。そして改めて今夜のことを考えるんだ」
僕は黙っていた。
「君は金を持っていない。友達も金を貸してくれない。どこにも金は無い。
口を開けて空を見上げても神様は金を恵んでくれない。
降って来るのはせいぜい雨か黄砂か、良くて鳩の糞くらいだ」
彼はにこりともせずに言う。
「身の程を知れということだよ。僕が言いたいのは」
彼は黄色いオーバーオールのポケットに手をつっこんでいる。
定年退職を明日に控えた高校教師みたいな顔でじっと僕を見つめる。
「君の所持金は貧弱だ。だけどゼロじゃない。そうだね?」
僕は小さく頷く。
「ハンバーガーセットふたり分くらいはあるんだろ?」
彼は後ろを振り返る。そこには黄色い「M」の回転看板が、魔法使いの槍みたいにそびえ立っている。
「マクドナルドで乾杯したらいい。彼女には正直に話せばいいさ。
話せばわかってくれる。それで不機嫌になるようなら、ろくな女じゃない」
僕は黙っている。
「それに」ドナルドはそこで初めて笑顔を見せる。
「ハンバーガーだってそう悪いものじゃないよ」
I'm lovin it、彼はそう言って片目をつぶった。

868 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/15(土) 01:39:51 ID:SVobaU9M
「ハッピー?チキン野郎」とドナルド・マクドナルドは言った。
「黙れ、めっきしゃちほこボケ」とカーネル・サンダースは怒鳴った。
ピエロは慇懃な微笑を顔に張り付けたまま、ゆっくりカーネルに近づいた。
するとカーネルの背後から一匹の熊が現れ、ドナルドを殴り倒した。
「熊ー!」熊は誇らしげに吼えると、春の山へ帰って行った。

863 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/14(金) 11:54:42 ID:PlnkbtHG
昨日久しぶりに会った友人が言った
「どうなんだ?恋人はいるのか?」
僕はしばらくのあいだ考えてから二次元の女の子を除外することにした。

「いや、」と僕は言った。
「さびしくないの?」
「慣れたのさ。訓練でね。」
「どんな訓練?」

僕は煙草に火を点けて、煙を彼の五十センチばかり頭上に向けて吹いた。

「僕はふしぎな星の下に生まれたんだ。つまりね、欲しいと思ったものは
何でも必ず手に入れて来た。でも、何かを手に入れるたびに別の何か、
おそらく人間としてとても大切な何かを捨ててきた。わかるかい?」

彼は暫くのあいだ、足の長い珍しい蚊を追うように視線を泳がせた。

「まぁ、少しは。」

「そうして気づいてみると、本当に欲しいと思ったうものは永遠に手に入らなくなっていた。
だれも信じてはくれないけれどこれは本当なんだ。三年ばかり前にそれに気づいた。
そしてこうも思った。もう何も欲しがるまいってね」

彼は首を振った。「それで、一生そんな風にやっていくつもりか?」

「おそらくね。誰にも迷惑をかけずに済む。」

「本当にそう思うなら、」と彼は言った「靴箱の中で生きればいい」

僕は頷いた。事実そうして来たのだった。

895 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/20(木) 21:00:52 ID:CKepiEvV
ところで今日僕は自分の通帳を久しぶりに見た。
それはまるで冷蔵庫の中で湿気たビスケットと干からびたタマネギが並んでいるような有様だった。
「GWにはどこかに行きたいんだけど」
口に出してみてもう一度通帳を見た。
そこにはいつ開けたのか思い出せないポン酢と黄色くなったマーガリンがあった。

906 :おさかなくわえた名無しさん :2006/04/23(日) 03:20:55 ID:jo/Zzd5k
さて、と僕は考えた。一体これからどうすればいいのか?
いや、考えなくていい。考える必要すらない。
お前はもう終わっているのだ。
僕は鏡を見た。虚像の自分自身を見つめる。
お前はもう終わった人間なのだ。そして終わらせたのはお前なのだ。
僕はずっと鏡を覗き込んでいた。でも虚像の僕は何も言ってくれなかった。

925 :おさかなくわえた名無しさん :2006/05/01(月) 10:20:26 ID:9t6PCbgk
「あなたって少し変わっているわ」と彼女が言った。
「そうかな」と僕は言ってオンザロックを少しなめた。
「変わっているっていうよりおかしいわよあなた。
だっていつもウィスキーしか飲まないじゃない?」
彼女は神経質な猫みたいにブラッディーマリーのグラスに付いた水滴を拭き取った。
「そういわれればそうかもしれない」僕はピスタチオの堅い殻を割った。
「だいたいあなたはTPOすらまともに理解してないわきっと。
こんなふうにバーやラウンジで最初から最後までウィスキーを飲むのは
まぁ許せるとしてフレンチやイタリアンそれに中華料理や懐石料理の時まで
ウィスキーを飲むのはどうかと思うの。
ふつう料理に合わせた白ワインや赤ワインとか中華には紹興酒、
懐石料理には日本酒、それにビールだっていいわよ。
みんなそんな風にしてお料理とお酒を楽しんでるわけでしょう?
なのにあなたはいつもウィスキーしか飲まないじゃない。」
少しの間彼女は僕の顔をみていた。
正確に言うと僕をみていたのではなく彼女と僕の間にあるみることのできない
メタファーの何かだ。

926 :おさかなくわえた名無しさん :2006/05/01(月) 10:24:21 ID:9t6PCbgk
「それに結婚式の披露宴のときなんて乾杯のシャンパンをシャンパングラスから捨てて、
持ってきたポケットビンのウィスキーをひとりで注いで飲んでたでしょう?
私恥ずかしくってずっと下向いて顔を上げられなかったわよ。
どうしていつもそんなことばかりするの?
もうすこし周りに合わせる事とかできないの?」
そう言って彼女はブラッディーマリーを飲み干して首を振った。
「僕はそんな風に周りに気を遣ってすることなんてまだできないと思うんだ
迎合なんて無理かもしれない。
うまく言えないけど世の中には変えることの出来ない物事というのは何かしらあると思う。
僕はいつでもウィスキーだけ飲みたいと思っているわけじゃない。それに・・・」
僕は小さくなったオンザロックの氷を齧った。
「なによそれ馬鹿じゃないの?。
どうして飲みたくもないウィスキーばっかり馬鹿みたいに飲んでるのよ?
それに・・・ってなによ?どうせまたくだらない事言いだすつもりなんでしょう?」
と言って僕の肩を思いっきりなぐりつけた。
どうやら彼女は混乱したときには暴力的な行為に及ぶ事が多いみたいだ。
僕は何も無かったようにオンザロックをまた少しなめた。
肩がすこし痛んだけどそれについては何も言わないことにした。
「じゃいったいあなたは何ウィスキーばっかり飲んでるのよ?」と彼女が言った。
「オーケー、はっきり言おうそれはきっとこういう事なんだと思う。
『ニッカ』だ。」
言った後で僕はひどく後悔した。
やれやれ、この頃言わなければならない事と
言ってはいけない事の区別ができなくなってしまったようだ。



『村上春樹風』 今日の愚痴  上



スポンサーサイト

コメント


おもろい(´Д`)☆

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://news4u.blog51.fc2.com/tb.php/705-ad80bd99

  | HOME | 

日付別アーカイブ

月別アーカイブ

カテゴリ

最近のコメント

トラックバック

案内所

リンク元の一覧はコチラ

よく分からないスペース

アクセスランキング
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。